Masuk「えへへ……♪ 薬屋で金属職人、武器屋でもあるのですよ。それに冒険者で王子様で、わたしの婚約者ですわぁ♡」
ミリアが俺を見て、デレデレした顔で答えた。その青く透き通った瞳は、俺への愛でとろけそうだった。俺の腕に抱きつく力が、さらに強くなる。
ま、まあ、否定できないか。実際に手を出している商売だし。
「はぁ……そうですか……凄い肩書を、たくさんお持ちなのですね……?」
ユリは、呆れたような感心したような、複雑なため息を漏らした。
「そうなのですよ。……そして、次期皇帝になりますのよ」
ミリアは、満面の笑みで、まるでそれが当然の事実であるかのように言い放った。その青く透き通った瞳は、確信に満ちている。
「わぁっ!……そ、そうなのですね。……ユウヤ皇帝陛下」
ユリは驚きのあまり、思わず最上級の敬称を口にした。
いや、それは違うだろ!皇帝は聞いてないぞ!?無理だから!帝国が崩壊するって!俺の顔は、驚愕と焦りで引きつる。
「え? 俺が? は? どこの情報!?」
俺は思わず前のめりになって詰め寄った。
「そうですわよ! わたしの夫ですわよ。皇帝に決まっていますわ」
ミリアは、一切の疑問を挟む余地を与えない口調で言い切る。その表情は、俺の戸惑いを純粋に楽しんでいるようでもあった。
はぁ……考えたくないね、それは。もう、勘弁して……ウソでも言わないで。
屋敷に帰ろう……か。
「ミリア帰るよ」
「はい♪」
ミリアは、俺の腕を掴み、嬉しそうに頷いた。
「では、ご一緒させて頂きます……」
ユリシス王女は、まだ驚きを引きずっているようだったが、すぐに表情を引き締め、恭しく申し出た。
王女様なら馬車だよな?馬車なら普通、王国の紋章入りだよな?お忍びなら……紋章なし?近くに停めて待機してるのか……?
「ユリは馬車だよね?」
「はい」
「近くに停めてあるの?」
「えっと……少し離れていますわ」
ユリシス王女は、目線を泳がせながら答えた。その声には、わずかな戸惑いが滲んでいる。
「一緒に乗って移動する?」
「え、えっと……」
ちょっと躊躇ってる反応だよね、これ。あ、でも、二人にしなきゃ大丈夫かな?歩いて移動するのも危険だし、誘ってみるか。
「馬車は、護衛の人に取りに行ってもらえば?歩いて移動するのも危険だしさ。一緒に乗っていけば良いんじゃない?」
俺は、彼女の安全を考慮して提案した。
「そうですわね。そうなさい」
ミリアは、俺の腕に抱きついたまま、当然のようにユリシス王女に命じた。その青く透き通った瞳には、一切の迷いがない。
ミリアに、そう言われると断りたくても断れないだろ……
「は、はい」
ユリシス王女は、ミリアの有無を言わせぬ圧力に、小さく頷くしかなかった。
大きな馬車が目の前に停まった。見た目は普通の大きな馬車に見える、だが内装は豪華で椅子もフカフカになっていた。馬車の扉が開くと、中から上質な革と木材の匂いが漂ってきた。
「帝国の紋章や外装は豪華にしないのですか?」
ユリシス王女は、馬車を見上げて尋ねた。
「ええ。ユウヤ様が目立たないようにと仰られるので。」
ミリアは、俺の腕に寄り添いながら答えた。
「どうして、でしょうか?」
ユリが不思議そうに俺を見つめてきた。その青く澄んだ瞳には、純粋な疑問が浮かんでいる。
「あぁ、えっと……普通に町の中を移動できないからかな。……目立つし、狙われやすいからね。店の前で止まったりでもしたら注目の的になるでしょ?」
俺は、ごく自然なこととして説明した。
「あぁ……そういう事ですか!」
ユリは納得したように頷いた。彼女の表情には、王族ならではの、目立つことのリスクを理解した色が浮かんでいた。
「行き先が王城と屋敷だったら豪華でも良いけど……俺が向かう先は町の中のお店だしね。」
俺は、簡潔に理由を付け加えた。
「そうですわね……お店に豪華な馬車で通うと問題ですわね……完全に狙われますわね。さすがユウヤ様ですわ」
ミリアが褒めてくれると、俺の腕に抱きついてきた。その抱擁は、俺の考えへの賛同と愛情を表しているようだった。話をしていると、直ぐに屋敷に着いた。
「わぁ~素敵なお屋敷ですね」
ユリシス王女は、馬車を降りて屋敷の外観を見上げ、心から感嘆の声を漏らした。
「お城に比べれば小さな家ですわ」
ミリアは、どこか自慢げに答えた。
「お城は大きいだけですし……この様なお屋敷に住みたいです」
ユリシス王女の青く澄んだ瞳には、羨望の色が浮かんでいた。
「父親に頼んでみては?」
ミリアは、軽い気持ちで勧めていた。
「うちの父親は許してくれませんわ……」
ユリシス王女は、寂しそうに肩を落とした。
お屋敷の中に入ると、またユリが屋敷を褒めていた。内装の細部にまで目を凝らし、その優雅さに感銘を受けているようだった。ミリアは、そんなユリシス王女を横目に、そのまま部屋着に着替えに部屋に向かった。
「上手くミリアと話が出来てるじゃん。俺は、もう必要ないんじゃない?」
俺がそう言って、少し離れようとすると、
「え? あ、ちょっと、お待ち下さい……ユウヤ様っ!」
ユリが動揺した顔で、俺の服を掴んできた。その手は、焦りで微かに震えていた。青く澄んだ瞳が、不安そうに揺れている。
「幸運なのですかね……金や権力があった方が良いですが、それが目的で付き合って無いので、金や権力が無くても一緒に居られれば幸せですよ。お金なら俺も持っていますし稼いでますしね。権力が無くても暮らせますよ」 ユウヤは、湯船の縁に頭を預け、夜空を見上げながら淡々と語った。その声には、物質的な豊かさよりも、心の平穏を重んじる静かな意志が宿っていた。「そうか……金や権力が無くても大切にするのだな?」 おっちゃんは、ユウヤの言葉の真偽を確かめるように、じっとその瞳を覗き込んできた。「勿論ですね……権力は、むしろ邪魔ですね、のんびりと暮らしたいので……」 ユウヤが少し困ったように笑いながら言うと、おっちゃんは目を丸くして、腹の底から響くような声で笑い出した。「変わった奴だなぁ! 普通は死物狂いで権力を手に入れようとしている奴等ばかりだぞ?」 だろうね~普通は。でも俺は、権力に魅力を感じないしなぁ……何でだろ?自分でも分からない。前世の記憶があるからか、それとも今の自由な身の上が気に入っているからか。「俺の考えは参考にはならないですね」 ユウヤは、気恥ずかしさを隠すように、お湯を掬って顔を洗った。「いや、それはそれで、珍しい考えで興味があるな。それで、その女と結婚をする気はあるのだろ?」 おっちゃんは、面白そうに目を細め、さらに踏み込んだ。その視線は、若者の覚悟の深さを推し量るかのようだった。「えぇ、ありますよ……婚約してますし。……好きなので」 ユウヤは、暗闇に紛れて赤くなった顔を隠しながら、はっきりと答えた。ミリアやシャルロッテの、時折見せる年相応の笑顔や温もりを思い出すと、自然とその言葉が口を突いて出た。「だったら要らないと言っている権力も付いてくるが良いのか?」 おっちゃんは、現実的な問題を突きつけるように、鋭い問いを投げかけた。その声は、
「夜に、ちょっと温泉に入りたくなりまして……」 ユウヤは、湯船に浸かったまま、平静を装って答えた。「一人でか?」 ヤバそうな人物は、ユウヤの言葉を吟味するように、低い声で問い返した。(あ、モンスターが出るんだっけ……普通は、一人ではこないか……) ユウヤは、自身の不注意を思い出し、内心で舌打ちした。「一応、冒険者をしているのでモンスターとの戦闘は問題ありません。日頃の疲れを癒やしに温泉に入りにきました」 ユウヤは、自分の職業と目的を簡潔に伝え、警戒心がないフリをした。「そうか……モンスターが活発になる、こんな夜中に温泉に入りに来るとは相当な強者なのだな。そういえば、ここに来る途中にモンスターが道端に大量に倒されていたな……」 その人物は、冷めた視線でユウヤを値踏みするように見つめ、ユウヤの通ってきた道の状況を指摘した。 その人物の胸には、昔受けたデカい刀傷の跡が、暗闇の中で薄っすらと白く見えた。それは、彼がただの強者ではないことを示す、凄絶な過去の痕跡であった。(いやいや、そっちの方が強者っぽいですけど……! やっぱり兵士のお偉いさんかな……? 顔も暗闇の中で薄っすらと見えるけど、今までに会った中で一番強そうで恐いな) ユウヤは、相手から発せられる重圧に警戒心を強めた。(あぁ、言われてみれば、倒したモンスターを放置してきちゃったな。ちょっと……不味かったかな?) ユウヤは、後始末を忘れたことに冷や汗をかいた。(それで、他の人は温泉に入っている気配は無さそうだけど……周囲に展開している気配からして、この人の護衛なのか……?)「それで道に転がっていたモンスターは、お前の仕業なのか?」 その声は、断定的な響きを含んでいた。
ムッとした表情のシャルロッテが玄関で出迎えてくれた。彼女は、両腕を組んで、不満げにユウヤを見上げていた。シャルロッテは、ムッとしていても頬を膨らませて可愛いオーラを出しているので、ユウヤにはたまらなく可愛く感じてしまう。(その……ぷくぅと膨らませた柔らかそうな、ほっぺを触りたいんですけど) ユウヤは、衝動的に手を伸ばしたくなるのを、必死に我慢した。「もお、遅いですわぁ……」 シャルロッテは、玄関先で待ちくたびれた様子で、膨らんだ頬をさらに膨らませて訴えた。「別に、遊びに行っていた訳では無いのですわよ」 ミリアは、冷淡な視線をシャルロッテに向け、自分の正当性を主張した。「分かっていますけれど……お姉様は、ユウヤ様を独り占めし過ぎですわっ」 シャルロッテは、嫉妬の炎を隠さずに、切々と訴えかけた。「こうもウルサイのなら、婚約を認めるんじゃなかったかしら……」 ミリアは、一瞬、ゾッとするような冷たい声で言い放った。 シャルロッテは、その言葉にハッとした表情になり、ユウヤの腕に慌ててしがみついた。その手には、強い焦燥感が込められていた。「ううぅ……ヒドイですわ……ユウヤ様からも、お姉様に抗議をしてくださいっ」 シャルロッテは、ユウヤに甘えるように助けを求めた。「はぁ~……俺が居ないと、二人は仲が良いのに困るよな~」 ユウヤが呆れたようにため息をつきながらそう言うと、二人は一瞬顔を見合わせ、ミリアが申し訳無さそうに言ってきた。「すみません。本当に仲が悪い訳ではないのですが……からかってしまって」 ミリアは、わずかに頬を赤らめて、視線を逸らしながら小声で謝罪した。「はい……おふざけですわ」 シャルロッテも、ユウヤの腕から離れ、
「何で、ミリアが勝手に決めるんだよ」 ユウヤは、自分の意思を無視されたことに、少し苛立ちを込めて言った。「ユウヤ様なら、お分かりになられるでしょう?」 ミリアは、ユウヤの置かれている立場と政略的な必要性を暗に示し、諭すような目線を向けた。「まぁ……分かるけどさ。また、相談もされてないんだけど?」 ユウヤは、理解はできるが不満は残るという表情で、不服を唱えた。 ミリアが俯いて、また怒られるという表情で、申し訳無さそうに言い訳をしてきた。「相談をしても答えは変わりませんし、必要ないかと……ユウヤ様が要らないと言うのであればお断りいたしますけれど……?」 ミリアは、俯いたまま、小声で言い訳をした。その声には、自分の判断への絶対的な自信と、ユウヤの機嫌を損ねたくないという気持ちが混ざっていた。「今回は、良いけど次回からは相談をしてよ」 ユウヤは、ミリアの性格を理解し、強く叱責する代わりに、今後のルールを明確にした。「はい……分かりました……」 ミリアは、心底安堵したように顔を上げ、素直に頷いた。 ミリアは、今まで文句を言われず自分の考えた通りにしてきて、相談をするという習慣がなかったから仕方ないけど、慣れてもらわないと。ユウヤは、ミリアの行動原理と彼女を変えていく必要性を静かに認識した。 今回のミリアの考えは、話からすると多分だけど、弱小の王国の娘は要らないと言っていたので、強い王国の娘をもらい裏切らないようにする意味と忠誠の証なのかな?王様も娘を差し出す見返りもあるだろう、皇帝の一族の側室になれば恩恵もあるんじゃないかな……。まあそれに……今回は幼い少女で無害と判断をしたのかもね。ユウヤは、ミリアの打算的な戦略と安全性の評価を冷静に分析した。「本人のユフィリスは、嫌がってるんじゃない?」 ユウヤは、政略結婚に巻き込まれる少
どこでって……前世で歴史とゲーム、アニメ、映画、ドラマで学んだとは言えないよな。ユウヤは、脳裏に浮かぶ大量の知識の源をどう説明するかに、一瞬思考を巡らせた。「え? 独学だけど……」 ユウヤは、当たり障りのない言葉を選び、曖昧に誤魔化した。「独学ですか? 独学では領主経営学を学ぶのは必要ないですし無理だと思いますけれど……ですがユウヤ様なら可能なのかもしれませんわね」 ミリアは、ユウヤの発言に疑いを持ちながらも、彼の非凡さを考えればあり得ると、無理やり納得しようとした。 良く考えてみれば、領主経営なんて独学で学ぶのはおかしいよな……。領主になる予定や貴族で領主の側近で働く予定がなければ無駄な知識だし、そうであっても独学では無理か……。書物等売っている訳じゃないし、領主が貸してくれる訳もない。ユウヤは、この世界の常識に照らし合わせ、自分の発言の不自然さを再認識し、冷や汗をかいた。 今ならミリアとシャルロッテと婚約したので、これから勉強するからと言えば、国王は喜んで書物を貸してくれるし、優秀な先生の手配をしてくれるだろうけど。ユウヤは、現在の立場が、自分の不自然な知識を後付けで正当化できることに気づき、少し安堵した。「薬屋をやってると色々な風変わりなお客さんが来て話をしてくれてさ、興味があったから話を聞いているうちに学んだって感じかな」「そうでしたか」 とっさの言い訳だったけど、ミリアは納得してくれた様で良かったが、国王を放っておいて良いのか?一応この国の王様だぞ?ユウヤは、目の前で繰り広げられる権力構造の逆転に、内心で首を傾げた。「ミリア……王を放っておいて二人で話すのは、どうかと思うぞ?」「そうですか? なにか問題あります?」 ミリアが怪訝そうな顔で国王の方を見て確認をすると、国王は顔を青ざめさせ、慌てた様子で両手を振って否定をした。「問題などありません。私を気にせずお話を続けてください」
まあ、普通は貴族からお金を出させるとか、寄付金を募るとか思っているんだろうけど……ユウヤは、彼らの甘い認識と、自分がこれから行おうとしていることの根本的な違いを認識した。「ふざけるな! 横暴だ! 貴族の監禁は重罪だぞ!」 上級貴族の男が、激昂した声で会議室の扉の向こうから叫んだ。彼の顔からは、さっきまでの余裕が完全に消え失せていた。「監禁では無く……証拠隠滅阻止、調査の妨害防止の為の一時的な投獄です。罪状は王国のお金の私的な使用の疑いなので、解決するまでの間は我慢していてください」 ユウヤは、冷静に、しかし断固とした口調で法的な論理を突きつけた。「なんだと? そんな証拠はないだろ! 推測で貴族を投獄するなどありえん! すぐに開放しろ!」 男は、さらに声を荒らげた。急に貴族達の顔から余裕が消えて慌てだしたが、国王が毅然とした表情で兵士に命令をした。 「直ちに執行せよ!」 その声を受けて、訓練された上級兵士や騎士たちが次々に会議室へ入り、大声で抗議する貴族たちを迅速に拘束して投獄した。応接室と会議室を隔てる扉が閉ざされ、激しい怒号と抵抗の音が遠ざかると、室内は再び静かになった。「では、毎回税金を納めていない貴族と、納めている貴族を教えてください。真面目に税金を納めている貴族は関係ないので開放してあげてください」 ユウヤは、静まり返った室内で、落ち着いた声で国王に次の指示を出した。その声は、一切の私情を挟まない、公正な判断を求めていた。 国王は、恐る恐る、税務に関する資料を提出した。 税金を減額申請をしている領地、納めていない領地の資料を調べて、ミリアとシャルロッテが馬車を駆り、足早に領地を見て周り、領民からも話を聞いた。その結果、25の領地の内、15の領主が不正をしていて、豪邸に住み、領民からの酷い噂ばかりが報告された。強制的に調べた結果、不正の事実が確実であると確認でき、国王の厳命により、爵位の剥奪と全財産の没収が実行された。 それと、モンスターが出現してというのは真っ赤なウソですぐにバレた&hell